一人親方が現場に入れないかも!?知っておきたい入場制限について
建設業に携わる一人親方が、これまでと同じように仕事を請けて収入を得るためには、建設現場へ入場できなくてはなりません。
しかし、最近の建設現場では一定の条件をクリアしていないと、これまでお付き合いのあったところからの仕事でも入場できないということも起こりえます。
そこで今回は、一人親方がこれからも心配することなく、仕事を請けて続けるために必要な入場制限についてお話していきます。
Contents
1: 現場入場が認められないケースを知っておきましょう
これからの一人親方にとって気をつけておかないといけないことがあります。それは建設現場への入場制限について。
いくら大きな現場の仕事があったとしても、どれだけ長期間の仕事を依頼されたとしても、入場制限に引っかかると断らないといけないことになります。
これは大変困った状態ですし、親方としても避けたいリスクではないでしょうか。
(1)建設現場の入場制限
建設業において仕事中や現場への通勤中に発生する災害は、他の業種よりも起こりやすいと言えます。
そのため長年に渡り、万が一のときのために補償する社会保険への加入を企業に進めてきました。
この活動によって、建設業を営む企業(会社)では、かなりの確率で社会保険の加入が進み、万が一のときにも補償されるようになってきています。
その結果、今では社会保険に加入できない建設業の企業には人がやってこなくなり、きちんとした会社なら問題なく補償体制があるため、建設現場での事故などにも対応できるので問題なく入場できる仕組みが作られつつあります。
おそらく今後は、多くの建設現場でこのような仕組みが導入され、現場に立つ人全てに社会保険(特に労働災害に対応する保険)への加入義務が生まれてくると思われます。
(2)適切な保険に入ってない
どこかの建設業の会社に雇われている人は、会社が社会保険に加入してくれているので何も考えなくても問題ありません。
しかし、一人親方の場合は違います。ご自身で適切な保険に加入していないと、上記の入場制限に引っかかってしまい、いくら良い条件の仕事であっても断らないといけないことになります。
では、一人親方にとって現場入場の制限に引っかからない適切な保険とはどういうものでしょうか。
一般的な会社にお勤めの方にとっての社会保険とは以下の3つです。
- 雇用保険
- 健康保険
- 労災保険
- 国民年金保険
一人親方にとって加入するべき適切な保険とは、次の2つになります。
- 国民健康保険
- 労災保険特別加入
- 国民年金保険
違いは「雇用保険」にあります。この保険は会社にお勤めの方だけが加入する保険なので、一人親方には関係ありません。
(3)よくある現場のガイドライン
現場の入場制限におけるガイドラインで良くあるのが次のポイントです。
「労災保険に加入しているかどうか」
会社にお勤めの方は、ほとんど気にすることがありません。会社が全てやってくれています。しかし一人親方の場合、先ほど出てきた「労災保険特別加入」をしているかどうかで状況が変わってきます。
他には、
- 健康保険
- 国民年金
こうした部分をガイドラインに含めているところもありますが、もっとも重要視されているのが「労災保険」の加入です。
親方は労災保険に加入しているでしょうか。今一度確認しておきましょう。
(4)国が定めるガイドライン
平成26年9月に国が定めたガイドラインがあります。
このガイドラインには、下請けを含むすべての職人が社会保険に加入できている状態にしなさいと書かれています。
特に公共工事に携わる場合は、より厳格にチェックされることは言うまでもありません。
もし一人親方が労災保険・健康保険・国民年金に加入していないと、ガイドラインから外れてしまうので仕事が請けられない可能性が高くなっているのです。
2: 現場入場が認められないと親方が困ることとは?
現場入場が認められないと、一人親方が次の4つのことで必ず困ることになります。
(1)生活するための収入
もっとも影響するのが、明日からの生活費が得られなくなることでしょう。
現場へ行けない=仕事ができない=収入が減っていく
このようになりますから、大変困った状況に追い込まれてしまいます。
(2)来月の仕事
一時的に現場入場できないだけならマシですが、来月、再来月に入場するハズだった現場にも呼ばれない。そんなこともあり得ます。
特に労災保険に関しては、未加入であると万が一の時に元請けも困りますので敬遠されてしまいます。
(3)新しい案件
元請けもリスクを背負いたくはありません。そのため仕事を依頼する一人親方の中でも、リスクの少ない人へ新しい案件を頼むようになります。
いくら腕が良くても、リスクが高い職人さんに依頼して、万が一のことがあれば責任追及されるのは元請けとしても回避したいのです。
(4)紹介
知り合いからの現場の紹介。人手が急に足りなくなって手伝って。そんなことも過去にあったと思います。
こうしたことも、今後は労災保険に加入していないと請けられない可能性が高くなります。というのも、紹介者も未加入者を現場へ入れてしまうと、これだけでリスクを背負うことになるからです。
3: 入場制限を満たすために忘れがちな保険
もう一度、大切なことなのでお伝えします。一人親方が入場制限を満たすために加入しておきたい保険は以下の2つです。
- 健康保険
- 労災保険
そしてもう一つ、国民の義務である「国民年金」。
民間の生命保険や傷害保険ではありません。それよりも、上記の3つに正しく加入しておきましょう。
働くことばかりに集中してしまい、こういった大切なことは忘れがちになります。今回のことをきっかけにして、ご自身が正しく加入できているのか確認しておくことが大切です。
4: 間違えやすい一人親方の働き方
一人親方とお勤めの職人さんとは、似ているけれど働き方が違います。
(1)労働者と親方の違い
会社へお勤めの職人さんは、会社との間に雇用契約があります。そのため仕事を選ぶことはできませんし、就業時間を自由に設定することはできません。
こういう働き方の人を「労働者」と呼んでいます。
いっぽう、会社と雇用契約はなく、仕事の依頼契約だけがあり、仕事を選ぶ権利も、就業時間も自分で決められる働き方を「一人親方」と呼びます。
この違いを知っておいてください。
(2)下請けの場合は少し注意しましょう
親方が下請けとして働いている場合、元請けとの間にどのような契約(約束事)あるのかを確認しておきましょう。
雇用契約がなくても、働き方によっては元請けの労災保険を使える可能性もあります。判断が難しい部分もありますので、「自分はどちらかな?」と悩まれた場合は、当協力会までお問い合わせください。
国家資格を持つ社会保険労務士が親方の働き方を丁寧にお伺いし、「労働者」なのか「一人親方」なのかをお伝えさせていただきます。
5: まとめ
一人親方にとって現場に入れないということは、明日からの生活に影響を与えることにつながります。
これまでと同じように、現場へ入場して仕事ができるよう、今回お話しました「労災保険」「健康保険」「国民年金」の加入を今一度確認しておいてください。
特に労災保険に関しては、良くわからないので未加入のままになっている。そんな親方もいらっしゃいます。もし未加入かどうかわからない。未加入なのはわかっているけれど、どうすれば加入できるのかわからない。そんな場合は遠慮無く当協力会までご連絡ください。
労災保険をはじめとする労働に関する仕組みの専門家である「社会保険労務士」が、丁寧に親方のお話をお聞きし、最適な方法をご提案させていただきます。