一人親方が仕事中に怪我をするとどうなるの?リスクと手続きについて解説します
建設関係のお仕事をされている方に多い「一人親方」。いくら気をつけていても、現場の仕事中に怪我をしてしまうこともあります。
また、怪我まではいかなくてもヒヤッとする場面に遭遇した経験をお持ちの方も多いと思います。
そこで一人親方に少し考えてみて頂きたいのですが、もし仕事中の作業が原因で怪我や病気など「労働災害」に遭ってしまった場合、その後の生活がどのように変化するかご存じでしょうか?
今回は、「大丈夫!そんなことにはならないから」と思っておられるため、労災保険に加入されていない一人親方へ、どのようなリスクがあるのかをお話していきます。
Contents
1: 一人親方が仕事中に怪我をするとこんな困ったことが起こります
一人親方は、どこかの会社と雇用関係にありませんので、自由な働き方が可能です。
元請けから依頼された仕事を受けるか受けないかも選べますし、受けた仕事をどのように進めてもかまいません。これは労働者ではない特権とも言えます。
しかし、自由度の高さがある反面、仕事中に怪我や病気になってしまった場合、労働者のように雇用関係のある会社が面倒をみてくれることがありません。
そのため一人親方には、次のような困ったことが起こります。
(1)治療費に困ります
まず、仕事中の事故などが原因で怪我や病気になった場合ですが、一般的には治療しようとされるはずです。
しかし、一人親方が労災保険に加入していないと、治療費に関して全額ご自身で負担することになります。
健康保険に加入されている場合ですと保険を使えることもありますが、3割の実費分は自己負担となります。
これも小さな怪我で高くない治療費なら「まぁ、いいか」と思えるでしょう。しかし仮に現場での事故により鎖骨を骨折して、手術しないといけないような状態なら、治療費は15万円以上必要になるケースが多いです。
ということは、かなりの高額を自己負担し、突然の出費に困ることにもなりかねません。
(2)休業中の収入に困ります
治療してすぐに現場へ復帰できれば良いですが、入院が必要だったり、自宅での療養が必要だったりすると、その期間は現場へ入ることができなくなります。
ということは、一人親方は労働者ではありませんので会社勤めの方のように
- 有給休暇
- 傷病手当金
これらの恩恵を受けることができませんので、収入が途絶えてしまいます。
また、これは元請け会社や、その上の会社との関係性にもよりますが、現場へ入れないことになると、復帰した後に仕事をもらえなくなる可能性もあり、入院や療養しているときにかかった金銭的な負担が、さらに重くのしかかってくることもあります。
(3)現場へ入れなくなる可能性が高いです
これは最近の現場で増えてきていますが、労災保険未加入の親方が現場へ入場できなくなることです。
現場で怪我をしたことで労災保険未加入が元請けに知られ、現場への入場が制限されることもあるでしょうし、今後は仕事をもらえなくなることも考えられます。
これら3つの困ったことは、一人親方の生活に直結している問題です。怪我や病気になっただけでも苦労するのに、治療費と生活費の出費という苦労も出てきます。
2: リスクを軽減する労災とは
先ほどの困ったこと(リスク)を軽減するためには労災保険への加入がおすすめです。
(1)労災保険とは
労災保険とは、業務上または通勤中に発生した災害によって、怪我や病気、または死亡に対して一人親方やご遺族へ必要な保険を給付する「国の社会保険制度」です。
一般には会社勤めをされる労働者のための制度ですが、一人親方は特別に労災保険の加入が認められています。
(2)労災保険の選び方
労災保険を選ぶときですが、仕事ができない期間、いくらくらいの補償が必要になるのかを考えて選びましょう。
そのためには、普段の所得水準を明確にし、水準に見合った金額で労災保険へ加入する必要があります。
まれにいらっしゃるのですが、とにかく最もやすい「日額3500円」で加入し、怪我をして休業補償の請求をすると、あまりの金額の少なさに愕然とされることもあります。
ちなみに怪我や病気の治療費に関しては、労災保険の掛け金に関係なく「全額補償」されます。
3: 労災保険に一人親方が加入するメリット
労災保険に一人親方が加入すると、次のようなメリットがあります。
(1)療養給付
怪我や病気の治療に必要な費用を、全額労災保険が補償給付してくれます。
ということは、怪我や病気に必要な治療を遠慮することなく受けることができるのです。
これは大変大きなメリットだと言えるでしょう。怪我や病気はきちんと治療しておかないと、復帰しても身体の不調が続き、結局は思うように現場へ入場できない可能性もあります。
(2)休業補償
2つ目のメリットは、怪我や病気で仕事ができない期間の収入に関する補償があることです。
休業補償で支払われる金額は、労災保険に加入するときに決めた日額(3,500円~25,000円)によって変化します。そのため、先ほども少し触れましたが、親方の普段の収入水準に見合った補償を受けることができる掛け金にしておくことが大切です。
収入水準よりも安い掛け金の場合、万が一の時の休業補償では不足してしまいます。
(3)元請け先との信頼関係
怪我や病気をしなくても、労災保険に加入していることは元請けとの関係を良くします。
特に大手ゼネコンが仕切っている現場の場合ですと、未加入では入場できないことになりますし、仕事をもらえなくなる可能性が高くなってきます。
4: 一人親方が労災保険へ加入する方法
一人親方が労災保険へ加入する方法を見ていきます。
(1)団体や組合、協力会から加入
一人親方が労災保険へ加入する場合ですが、ご自身で自治体や生命保険会社や損害保険会社の窓口へ行っても加入できません。
労災保険というものは単独での加入はできないため、都道府県労働局長の承認を受けた
- 団体
- 組合
- 協力会
このようなところへ加入した上で、労災保険に関する事務手続きや処理を任せることになります。
(2)加入する時に注意したいこと
団体や組合、協力会などはインターネットで検索すると、いろいろ出てきます。
いろいろ出てきた中から選んで加入することになりますが、ここで加入時に注意しておきたいポイントをお話しておきます。
もし、親方が「行事」「組合活動」を好きなら、そういった動きをしているところを選びましょう。反対にこうしたことが苦手な方は、強制的に行事や組合活動への参加を求められないところを選びましょう。
(3)費用に関してのポイント
加入を検討される団体や組合、協力会によって、労災保険への加入に関する費用が変わってきます。
まず、ここでご理解いただきたいのは、労災保険の掛け金は全国一律だということです。この費用は、どこの団体や組合、協力会へ加入しても同じです。この費用が、どこかだけ安いということはありません。
反対に、団体や組合、協力会への
- 入会費
- 年会費
- 労災申請時の事務手数料
これらは違っています。
加入を決めるポイントとしては、総額で安くなるのかどうかです。
入会費だけ安くても、年会費が高いというところもあります。
また、入会費や年会費は安いけれど、怪我や病気になったとき労災申請する事務手数料が高いというところもあります。
さらに、労災申請時の事務処理がスムーズにできるところなのかどうかも注意しましょう。事務処理が遅いと、なかなかお金が入ってきません。
事務処理に関しては、専門家としての国家資格を持つ社会保険労務士が行っているところだと安心です。
5: 万が一怪我をしたときの手続き方法
当協力会では、労災事故が発生した場合、親方から「事故発生報告書」を記入して報告頂くようにしております。
報告書はホームページからダウンロードすることができますので、すぐにご記入いただける準備が整っています。
他の団体や組合、協力会によって手続きの方法は違いますので、加入されるときには確認しておきましょう。
6: まとめ
一人親方が仕事中に怪我をすると、治療費と収入の問題が出てきます。この2つは生活に直結しているため、問題が起こる前に対策しておきたいところです。
もし、親方が労災保険に未加入なら、できるだけ早く検討いただきたいと思います。何かがあってからでは遅いのです。
「あのとき入っておけば良かった」と後悔をしても、お金の問題は解決できません。