一人親方に必要な保険とは?入っておくと安心できる労災保険
建設業や建築業に携わる一人親方に必要な保険をご存じでしょうか?保険というと、生命保険くらいしか意識されていないかもしれませんが、会社員としてお勤めされていたときとは違い、一人親方になると加入しておくべき保険が変化します。
では、どんな保険に一人親方は加入しておくべきなのかというと、保険は難しく感じるため理解されていない方がいらっしゃいます。
そこで今回は、一人親方に必要な保険についてお話していきます。これから一人親方として仕事をされる方。すでに一人親方として仕事をされているけれど、保険には加入しておらず少し不安をお持ちの方。すでに保険に加入しているけれど見直しも必要かなと考えておられる方。こうした方のお役に立てれば光栄です。
Contents
1: 一人親方が加入しておくと安心な保険の種類
一人親方が加入しておくと安心な保険の種類についてお話します。大きく分けると5つの保険があります。それぞれ一つずつお話していきます。
(1)国民健康保険
国民健康保険には加入されているかと思います。この保険は義務ですので未加入ではいけません。
もし、一人親方になったところで未だ手続きを済ませておられない方は、速やかに住民票のある自治体窓口へ相談し加入を進めてください。
というのも、国民健康保険に加入していないと風邪やインフルエンザになったとき、病院で治療を受け支払う費用が全額自己負担になってしまいます。
仮に、検査費用とお薬の費用の合計が10万円だったら、親方は10万円を支払うことになります。しかし国民健康保険に加入していると、保険料を支払う必要はありますが、医療費の3割負担で済みますので、先ほどの例ですと3万円だけ支払うことになります。
どうしてこうしたお話をするのかといいますと、建設業や建築業の一人親方は仕事柄どうしても不特定対数の人たちと同じ現場で仕事をされる時間が長いため、風邪やインフルエンザなどに感染しやすいためです。
また、事故ではなくても、重い物を持ち上げた時に腰や背中を捻ってしまって痛みが取れない場合、保険治療をしている整骨院や整体院で治療をされるときの負担額が変わってきます。
一人親方はカラダが資本です。そのため、いつでもメンテナンスしやすい状態を作っておかないと収入に影響していきます。こうした理由からも国民健康保険には必ず加入するようにしてください。
(2)生命保険
加入されていることの多い保険の代表です。金額が多いか少ないかは別にして、何らかの生命保険に加入している人が多いです。
一人親方の場合も同じように、生命保険には加入しておくことをおすすめします。特にご家庭をお持ちの方は、万が一あなたが仕事中に災害で亡くなられたとしても、家族が困ることを防げます。
また、ご家族のことを考えられるなら生命保険の金額は3000万円以上の設定が理想です。というのも、1000万円ですと何ができるのか、いつくらいまで何とかなるのかを見通せません。比較的早い段階で保険金が底をついてしまいます。
特にお子さんがいらっしゃる場合ですと、この先の教育費なども必要ですから、最低でも3000万円以上の生命保険加入を検討しておきましょう。
(3)医療保険
完全に任意の保険です。生命保険は亡くなった後に残されたご遺族のための保険ですが、医療保険はご自身の病気やケガにかかった費用を保障してくれる保険です。
一般的なケースですと、何らかの災害や病気で働けなくなった場合の保障です。
医療保険は保険料が比較的高額になります。ご自身の理想の生活スタイルと収入比率から最適なプランを選ぶことが大切です。
無理をした保険料設定のプランでは結局払い続けることができません。
(4)工事保険
工事中に何かをぶつけて壊してしまった。同じ現場の○○さんをケガさせてしまった。
気をつけていても起こってしまうこともあります。こうしたときの保険として対物対人賠償保険への加入を考えておきましょう。
どうしても賠償となったときの請求金額は高額になります。保険に入っていない状態で賠償額を請求されても払いきれないこともあります。
店舗系のお仕事が多い親方、住宅現場が多い親方、など人や車や建物が近くにあるという方は加入しておきたい保険です。
(5)労災保険特別加入
労災保険とは仕事中や通勤中の災害によって被ったケガや病気の治療費。休業している間の休業補償を保障する保険です。
会社員として働いているときは会社が自動的に「社会保険」という枠組みで加入してくれています。
しかし、一人親方の場合は会社へ雇用されていませんので、ご自身で加入する必要があります。
2: 特に一人親方におすすめするのが労災保険
一人親方が加入しておきたい保険を5つお話しました。この中で特に一人親方に加入をおすすめしたいのが「労災保険」です。
(1)労災保険の制度とは
労災保険とは、仕事中や通勤途中の災害によって必要となった
- 治療費
- 休業補償
- 後遺障害への補償
- 死亡時の補償
こうしたことを「国」が行うための制度です。
そのため会社員の場合は、強制的に加入することになります。しかし一人親方の場合は、強制加入ではなく任意加入となっています。
そのため、労災保険へ加入していない親方もいらっしゃいますが、今後のことを考えると加入は必須という意識を持って頂きたいと思います。
(2)一人親方が加入しないといけない理由
どうして任意なのに加入を勧めるのかというと、建設業や建築業の一人親方は現場や現場への通勤途中で事故に遭いやすいからです。
親方のまわりでも「○○さんが事故に遭ったらしい」とか「○○君が通勤途中に車とぶつかって」という話しをお聞きになったことはありませんか?
こうしたとき、労災保険に加入していないと、治療費は良くて国民保険の3割負担。ケガで仕事へいけない間の収入はゼロ。このように散々な状態になってしまいます。
こうしたリスクが高いお仕事だからこそ、一人親方には労災保険への加入を強くおすすめさせていただいているわけです。
3: 特別加入できる親方とは
労災保険の特別加入ができる親方には次のような条件があります。
- お一人(またはご家族だけで)建設業や建築業を営んでおられ、現場へ出られる方
- 建設業や建築業を営み、アルバイトを年間100日未満しか使わない方
こうした条件が大きな枠組みになります。ここで注意していただいたいのは、一人親方である「個人事業主」が全員加入できるわけではないということです。
建設業や建築業を営んでおられる親方だけ「特別扱いされている」保険なのです。
4: 労災保険加入の流れ
労災保険加入の流れを見ておきましょう。
(1)手続き方法
労災保険の特別加入の手続きで間違いやすいのが、どこで手続きをするのかです。
労災保険特別加入に関しては、都道府県労働局が承認した「団体」「組合」「協力会」と呼ばれるところへ連絡することから始まります。
国民健康保険のように自治体の窓口ではありません。生命保険のように民間保険会社の窓口でもありません。
特別加入団体へ相談すると、手続きの流れや保険料、年会費、入会金などの説明を受けることができます。
ご自身の生活スタイルや収入などを元にして、最適なプランを選んでください。
(2)保険料
特別加入の保険料に関して覚えておいて頂きたいことがあります。
労災保険特別加入の保険料は、国が定めているため、どの団体、組合、協力会でも同じです。保険料に関しての差は一切ありません。
親方が負担する費用合計で差が出るのは、特別加入団体それぞれが決めている入会金や年会費、更新費用や手続き費用です。
間違えやすいので覚えておいてください。
(3)健康診断が必要なことも
建設業や建築業の中でも特殊なお仕事をされている場合、加入申請時に健康診断が必要になることもあります。
健康診断が必要かどうかは、特別加入団体へ相談されたときに、これまでどういった業務をされてきたのかお話いただくことでわかります。
5: まとめ
一人親方に必要な保険についてお話しました。5つの保険をお話しましたが、絶対に入っておいてほしいのは
- 国民健康保険
- 労災保険特別加入
- 工事保険
この3つです。余裕があれば生命保険への加入をおすすめします。
まずは、ケガや事故の可能性が高い親方ですから、上記3つは必須と考えていただけると安心してお仕事へ集中していただけるはずです。