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加入プランと補償内容

労災保険には対象となる災害と、対象にならない災害があります。
対象になる災害には次の2つがあります。

  • 業務災害
    (仕事中における災害)
  • 通勤災害
    (現場への通勤途上における災害)

業務災害

業務上災害の補償については、次に該当する場合に給付を受けることができます。

  • 請負契約に直接必要な行為を行う場合
  • 請負工事現場における作業およびこれに直接附帯する行為を行う場合
  • 請負契約に基づくものであることが明らかな作業を自家内作業場において行う場合
  • 請負工事に関する機械や製品を運搬する作業(手工具類程度のものを携行して通勤する場合を除く)およびこれに直接附帯する行為を行う場合
  • 突発事故(台風、火災など)により予定外に緊急の出勤を行う場合

※厚生労働省~労災保険『特別加入制度のしおり』より抜粋

通勤災害

通勤中に被った負傷や疾病、障害、死亡を通勤災害と言います。ここで注意が必要なのは労災保険上の「通勤」とは以下の3つを指していることです。

  • ①就業に関して住居と就業の場所との間の往復
  • ②就業の場所から他の就業の場所への移動
  • ③赴任先住居と帰省先住居との間の移動

これらを合理的な経路および方法によって行うこと指します。そのため業務の性質を有するものは、通勤災害から除くことになっています。また、先ほどの3つの移動経路を逸脱・中断した場合は、逸脱や中断中、および、その後の移動に関して通勤にはなりません。ただし、逸脱や中断が日常生活上必要な行為であり、日用品の購入などやむを得ない理由によって最小限度の範囲で行う場合は、合理的な経路へ戻った後の移動は「通勤」になります。

※厚生労働省~労災保険『特別加入制度のしおり』より抜粋し編集

「通勤」にならない事例

  • 仕事帰りに居酒屋へ寄った場合(中断になります)
  • 仕事帰りに居酒屋へ行くため経路を外れた場合(逸脱になります)
「通勤」になる事例

  • 仕事帰りに日用品を購入するためドラッグストアへ立ち寄って帰った
  • 出勤途中にATMへ寄り出社した

補償内容について

一人親方が業務上、または通勤途上に事故やケガに遭ったり、疾病にかかったりされ医療機関へ受診等した場合、労災保険からさまざまな給付を受けることができます。

ただし労災給付は無制限ではありません。給付には一定のルールがありますので注意しておきましょう。労災保険を使うような状況にならないことはもちろんですが、万が一使う必要が生じた場合を想定してご確認いただきたいと思います。

治療費等

一人親方が治療等を受けるとき、気を付けて頂きたいことがあります。それは利用される医療機関が「労災指定」かどうか。労災指定の医療機関の場合、指定した日までに労災の手続きが終われば、親方様は医療機関での窓口負担はなく治療等を受けられます。もし利用される医療機関が労災指定されていない場合、指定されているけれど医療機関が指定した日までに労災の手続きを終えられなかった場合は、医療機関の窓口で親方様が治療費の全額を一旦支払います。その後、親方様が支払った費用全額分を国(労働基準監督署)に請求し返還してもらいます。

続いて気になるのが治療等を受ける期間についてです。基本的には「治癒するまで」が受ける範囲になります。ここでポイントになるのは「治癒するまで」という言葉です。この場合の「治癒」とは負傷や疾病が完全に治った状態を指しているのではなく、これ以上の治療をしても回復や改善がみられない状態を言っています。

そしてご存じない方もいらっしゃるのですが、治療等以外にも支給を受けられるものがございます。例えば、次のような費用です。

  • 医療機関までの交通費(松葉杖が必要な場合ですとタクシー代も含まれます)
  • コルセット等の治療用装具
  • 鍼灸整骨院の費用

これ以外にもあります。こういった費用に関しては、事故やケガをされた本人が費用の全額を一旦支払います。後日、全額を国に請求することになります。

一人親方が休業した場合の補償

休業における補償は1日あたり給付基礎日額の8割(80%)です。給付基礎日額とは、親方様が労災保険に特別加入されるとき、または更新されたとき、ご自身で選んでいただいた金額です。休業補償に関しても、ご自身でお選びいただいた給付基礎日額をベースとして支給額を算出する仕組になっています。

休業における支給を申請する場合ですが、申請の都度、医師の証明をうけることが必要となります。また、一人親方の場合、個人事業主ですからタイムカードや賃金台帳という労務を証明する資料がありません。そのため、労働基準監督署によっては、別途労務を証明できる書類の提示を求められることもあります。

そして気になるのが休業申請をした後、実際に支給が決定され、補償金が振り込まれるまでの期間でしょう。初回の請求は、1ヶ月くらい必要とお考え下さい。ただ、事案によっては1ヶ月以上かかるケースもございます。2回目以降の請求は、初回ほどの時間がかかることは多くありません。また、休業補償が支給される期間ですが、治療費等と同じように「治癒するまで」となっています。

一人親方に後遺症が残った場合

一人親方が労災事故により後遺症が残った場合、障害(補償)給付が支給されます(障害(補償)給付は治癒後に支給されます)。治療費等や休業補償を受けている間は、障害(補償)給付は支給されません。

補償額ですが「障害等級」と「給付基礎日額」によって決まります。障害等級が1級~7級の場合は「年金」、8級~14級の場合は「一時金」になります。

年金は障害がある限り偶数月に継続して支給されます。一時金は一回だけの支給です。7級と8級で違いがありますので覚えておきましょう。

また障害(補償)給付には「別途障害特別支給金」があります。障害等級に限らず、すべて一時金として支給されます。ちなみに1級ですと342万円、14級なら8万円が一時金として支給されます。

障害(補償)給付の申請では、申請書類提出後に障害等級を決定する大変重要な審査があります。この審査には労働局の専門家と面談をすることが一般的です。実際に申請し、面談を経て障害等級が決定し、支給されるまで長い期間が必要になるケースが多いです。半年~1年ほどかかることもあります。

一人親方が死亡した場合

一人親方が労災事故によって死亡された場合、残された遺族へ遺族(補償)給付が支給されます。ここでのポイントは「遺族」の範囲です。というのも遺族が一人とは限らないからです。死亡された方から見て

  • 配偶者
  • 父母
  • 兄弟姉妹
  • 祖父母

これらの関係性が遺族になります。

ちなみに、妻以外の遺族については年齢要件があります。夫・父母・祖父母は55歳以上、子・孫は18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること。兄弟姉妹は18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあること又は55歳以上であるか、又は死亡当時第5級以上の障害の状態にある者に限られます。例えば、55歳以上60歳未満の夫・父母・祖父母・兄弟姉妹については60歳になるまで支給が停止されます。

続いて要件として重要になってくるのが、死亡した方の収入によって「生計を維持していたかどうか」です。これにより遺族の人数が決まります。ここで決まった遺族を労災保険法上は「受給資格者」と呼びます。受給資格者のうち、次の順位で受給権者が決まり、受給権者にまとめて遺族補償年金が支払われます。年金額ですが給付基礎日額の153日分から245日分が受給資格者の人数によって決まります。

  • 妻又は60歳以上か、一定の障害のある夫。
  • 18歳年度末までの間にある子(高校を卒業するまでの子)又は一定の障害のある子。
  • 60歳以上又は一定の障害のある父母。
  • 18歳年度末までの間にある孫(高校を卒業するまでの孫)又は一定の障害のある孫。
  • 60歳以上又は一定の障害のある祖父母。
  • 18歳年度末までの間にあるか、60歳以上又は一定の障害のある兄弟姉妹。
  • 55歳以上60歳未満の夫。
  • 55歳以上60歳未満の父母。
  • 55歳以上60歳未満の祖父母。
  • 55歳以上60歳未満の兄弟姉妹。

もし受給資格者となる遺族がいない場合は、遺族(補償)一時金が支給されます。こちらは給付基礎日額の1000日分が支給額です。

補償内容

補償内容を表にまとめました。特別加入者が業務上又は通勤途上による災害により負傷された場合、次のような補償を受けることができます。

給付の種類 支給の事由 給付の内容 特別支給金
療養補償 療養を必要とするとき 療養に必要な費用
休業補償 療養のため仕事をすることができずに休業するとき 給付基礎日額の6割を休業4日目から支給 給付基礎日額の2割を休業4日目から支給
傷病補償年金 療養開始後1年6ヶ月を経過しても 治らず傷病等級に該当するとき 給付基礎日額の1級313日分から 3級245日分の年金 一時金 1級114万円から3級100万円
障害補償年金 傷病が治った後に身体に障害が 残ったとき(障害等級1級から7級) 給付基礎日額の1級313日分から 7級131日分の年金 一時金 1級342万円から 7級159万円
障害補償 一時金 傷病が治った後に身体に障害が 残ったとき(障害等級8級から14級) 給付基礎日額の8級503日分から 14級56日分の一時金 一時金 8級65万円から 14級8万円
介護補償 傷病年金又は障害年金受給者のうち 等級が1級又は2級の方 介護費用(上限あり)
遺族補償年金 死亡したとき 遺族の人数に応じて、給付基礎日額の245日分から153日分の年金 一時金 300万円
遺族補償 一時金 死亡した方に遺族補償年金を受ける 遺族がいないとき 給付基礎日額の1000日分の一時金 一時金 300万円
葬祭料 死亡した方の葬祭を行うとき 給付基礎日額に応じて42万円から150万円

加入プランと補償内容の例

補償額の目安として、加入プランの一例をご紹介致します。ご自身の収入に見合った給付基礎日額を選択して下さい。

加入プラン (給付基礎日額) 3,500円 5,000円 10,000円 20,000円
負担額 1年の負担額 28,709円 38,025円 69,050円 131,100円
1ヶ月の負担額 2,393円 3,169円 5,755円 10,925円
療養補償給付(治療費) 無料 無料 無料 無料
休業補償給付 2,800円 4,000円 8,000円 16,000円
傷病補償年金 上限額 1,095,500円 1,565,000円 3,130,000円 6,260,000円
下限額 857,500円 1,225,000円 2,450,000円 4,900,000円
障害補償年金 上限額 1,095,500円 1,565,000円 3,130,000円 6,260,000円
下限額 458,500円 655,000円 1,310,000円 2,620,000円
障害補償 一時金 上限額 1,760,500円 2,515,000円 5,030,000円 10,600,000円
下限額 196,000円 280,000円 560,000円 1,120,000円
遺族補償年金 上限額 857,500円 1,225,000円 2,450,000円 4,900,000円
下限額 535,500円 765,000円 1,530,000円 3,060,000円
葬祭料 420,000円 465,000円 615,000円 1,200,000円
介護補償給付 上限額 166,950円 166,950円 166,950円 166,950円
下限額 36,500円 36,500円 36,500円 36,500円

※上記表中の負担額とは国に支払う保険料と会費の合算の金額です。
※1ヶ月あたりの負担額は1年あたりの負担額を12で除して得た金額を切り上げたものです。
※休業補償給付は1日あたりの額です。特段の理由がない限り、実際には支給申請を1月ごとに行いますので、1日あたりの支給額に支給対象月の暦日数を乗じた額が支給されます。
※年金は年額で、支給要件となった状態が続く限り一生支給されます。一時金は一回限りの支給です。
※遺族補償年金はある一定の遺族の数に応じて、金額が異なります。遺族が1人の場合は下限額。4人以上の場合は上限額となります。
※葬祭料は一時金です。
※介護補償給付は月単位での支給となります。
※業務災害による給付と通勤災害による給付とでは名称が異なりますが、給付内容はほとんど同じです。

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