一人親方とは?建設業の親方がやっておくべき手続きや問題点を解説
建設業に関わるお仕事では様々な労働の形があります。社員として働く方もいらっしゃれば、パート、アルバイトの方もいらっしゃいます。また、自社の正社員の方もいらっしゃれば、外注先の方もいらっしゃいます。
そんな中でも、比較的多いのが「一人親方」という労働形態。今回は一人親方が安全に現場で仕事をするために必要な手続きや、現場で問題になるポイントについて解説していきます。
Contents
1: 一人親方とは
まず「一人親方」とはどういった労働形態なのかを明確にしておく必要があります。
一人親方とは建設業界を中心に、「労働者を雇わず」に自分自身だけ、または自分自身のご家族だけで仕事をされている方を指しています。
例えば次のような方が「一人親方」となります。
- 従業員を雇っていない法人の社長さん
- ひとりで建設業の仕事をしている社長さん
- 家族だけで建設業の仕事をして現場に出ている方々
- 年間99日しかアルバイトを雇わない社長さん
建設業の他には、次のような業種にも「一人親方」がみられます。
- 大工工事業
- 左官工事業
- 電気通信工事業
- 林業
- 漁業
- 職業ドライバー
また、一人親方の中には、次の2つの働き方の違いがあることも知っておきましょう。
(1)仕事の指示や指揮監督を受けている
こちらの働き方は、自身での裁量が限定されます。どちらかというと「労働者」としての働き方に近いと言えます(雇用関係がある)。
そのため報酬も「働いた時間」で支払われるケースが多いです。
(2)仕事に関する裁量は自分で決められる
仕事を断ることも自由。毎日の仕事の進め方も自由。報酬は出来高。こういった働き方は「労働者」にあたりません(雇用関係がない)。
ここで大切なのは、あなたが一人親方として仕事をされるとき、どちらのケースで働いておられるのかということです。
まずは、一人親方であるかどうか。次に、どちらのケースで働いているのか。この2つを整理しておくことが大切です。
2: 一人親方に必要な手続き
一人親方を別の言い方にすると「個人事業主」と呼べます。そのため、税金や社会保険などの手続き上、考え方としては「個人事業主」として扱われますので、面倒に感じても次からお話することは、自分自身で手続きをしなくてはいけません。
会社に勤めていると、会社が勝手にやってくれますが個人事業主ではそうはいきません。また、忘れていると面倒な手続きが増えてしまうこともありますので、きちんと手続きをすることが大切です。
2.1: 確定申告
確定申告は、あなたが払う税金を決める手続きです。あなたが1年間働いて得られた所得を計算し、税務署へ申告することが必要です。この申告には「青色申告」と「白色申告」があります。
どちらを選べば自分にとってベストなのかは、税金の専門家である税理士や会計士に相談するようにしてください。
2.2: 社会保険
社会保険は、次の2つを指しています。
- 健康保険
- 年金
個人事業主扱いであれば、国民健康保険と国民年金です。どちらも手続きが必要です。
また、義務や強制ではありませんが「共済」というものがあります。将来の不安を少なくしたい方は、共済への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
2.3: 労災保険
忘れがちなのが一人親方の労災保険。
一般的な雇用関係や下請け関係にある場合、現場では元請けが一括して雇用者の労災保険へ加入するのが原則です。
しかし、一人親方の中でも「雇用関係にない」方は、元請けが一括して手続きする労災保険の適用を受けることができません。
そのため、万が一ですが仕事中や現場への移動中に事故があったとしても、労災保険が適用されず、治療費の一部を自己負担しないといけなくなります。また、ケガによって仕事が出来なかったときの収入もゼロになりますし、障害が残った場合や死亡した場合の補償が何もありません。
このようなリスクを回避するために、一人親方が絶対に忘れてはいけないのが、「労災保険の特別加入制度」への手続きです。
2.4: 民間保険
最後に、これは任意ですが民間保険の手続きもしておくと安心です。
特に一人親方の場合であれば、次の保険がおすすめです。
- 総合収入保障保険
- 賠償責任保険
収入保障保険とは、もし契約者が亡くなったとき、残された遺族へ所得の保障が行われる保険です。いつまで保険を受け取るのかは、どのような契約にするかによって変わります。
ご家族のライフプランを元に、保険の専門家に相談してみてください。
賠償責任保険とは、業務上に起きた偶然の事故により、第三者に対して法律上、賠償責任を負担した場合の損害を保障する保険です。
3: 労災保険の未加入で起こるリスクとは
先ほども少しふれましたが、一人親方が労災保険に加入していないと、次のようなリスクを常に持っていることになります。
(1)仕事中に事故に遭っても保障されない
仕事中にケガをした。現場ではあり得る話だと思います。
もし、大きなケガをすると、病院での治療費負担も大きくなります。2~3日休まないといけなくなり、現場に出られない分の収入が減ってしまうことも考えられます。
労災保険に入っていないと、このリスクは回避できません。治療費の一部を自己負担することになります。しかし、予め労災保険へ加入していると、これらの問題を回避することが可能です。
治療費の負担も、収入の問題も労災保険でカバーすることができます。
(2)通勤中に事故に遭っても保障されない
現場へ向かう途中。現場から帰る途中。事故に遭ってしまうリスクってありますよね?もし労災保険に加入していないと、通勤途中に事故に遭っても治療費や収入の保障がされません。
しかし労災保険に加入していると、どちらも保障され、安心して治療に専念できます。
(3)現場に入れない
国土交通省が策定した「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」というものがあります。
このガイドラインでは、次のような決め事が書かれています。
「適切な保険に加入していることを確認できない作業員については、元請企業は特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いとすべきである」
当ガイドラインは、事業主に対する健康保険、厚生年金保険、雇用保険の3つの保険について対象としたものですが、今後は一人親方についても国民健康保険や労災保険の特別加入が求められる可能性は高いと考えられます。
実際、労災の特別加入を現場入場の条件にしている現場は増加傾向にあります。
特別加入していないため現場に入れない。
これは大変困りますよね?現場へ入れないということは仕事を請負ことができません。そうすると収入も途絶えてしまい、生活への不安が高まります。
一人親方が安心して仕事に専念するため。問題なく現場へ入るためには、労災保険への加入が必要だということです。
4: まとめ
一人親方は働き方の自由度が高い反面、保障という部分が低くなりがちです。そのため、万が一のことを考えて労災保険の加入は絶対に考えていただきたいと思います。
最後に一人親方が行うべき手続きをまとめておきます。
- 確定申告
- 社会保険
- 労災保険
この3つだけは忘れずに手続きしておきましょう。